やらされている内は成長はない、を解明する|やる気のメカニズムの視点から

子育て

GAZKID$ではお金の教育のサービス開発に2021年1月より取り組みを開始しており、実際にモニター家族の協力を得ながら各家庭でお金の教育に取り組んでもらって調査を行ってきました。

子どもたちにお小遣いを稼がせる事を調査・研究する中で、我々の調査チームはやる気を作り出すメカニズムの事も並行して学ぶこととなりました。

なぜならば子どもたちが作業タスクに取り組んで得るお小遣いがやる気を生み出す「外発的動機付け」の「報酬」となる事が分かってきたからです。

今回の投稿ではこの発見を通じてGAZKID$が学び得た事を少し共有してみたいと思います。

【やる気は内側と外側から得られるもの】

やる気を作り出すメカニズムは大きく分けて2つあります。それは専門的な用語を使うと「内発的動機付け」と「外発的動機付け」となります。

まず「内発的動機付け」によって生み出されるやる気とは、各個人が持っている興味・好奇心などが作り出すやる気となります。例えば、虫が大好きな子どもが朝早起きして山に虫を探しに行くという行動力は内発的動機付けが作り出しているやる気になります。また、図書館に行って昆虫図鑑を借りて読んだり、保育園の図鑑を毎日のように開いているというような行動も内発的動機付けが与えてくれています。

「外発的動機付け」とは外から受ける刺激によって作り出されるやる気となりますが、先ほど述べた「お小遣い」のような「報酬」は外発的動機付けの一つの例となります。また、親から認められる、褒められるという「評価」も「外発的動機付け」となります。この他にも叱られるような「罰則」や「懲罰」なども「外発的動機付け」となります。

【自ら進んで出来る事がよい取り組みでやらされる事は悪い取り組み?】

子育てをしていると、子どもが自ら進んで何かに取り組んでいるのを見ることは、保護者としても気持ちが良いものです。半面、やらされていることを渋々やる、文句を言いながらやるのを見ると、もっと意欲的に取り組んでほしいという願いで心が重くなります。

しかしながら、意欲的に取り組めることと、そうでない事の違いはやる気の働き方の違いであり、すなわち内発的動機付けと外発的動機付けの観点から子どもたちの行動を判断するのであれば、子どもが意欲的に取り組む事には内発的動機付けが働いており、渋々、文句を言いながら、それでも取り組んでいる事は外発的動機付けが働いているという捉え方が出来るのではないでしょうか?

一般的には意欲的に取り組めている方が社会的評価が高いと感じます。

意欲的に勉強をする子供、意欲的に取り組んでいるスポーツの自主練に取り組む子供は見ていて気持ちがよく、社会的にも「立派だねー」という眼差しも得られやすいと思います。

では、半面渋々、文句を言いながら勉強をし、自主練に取り組んでいる子はどうでしょう?

勉強に関しては、学校の先生や塾の先生、スポーツであれば、親やコーチ、に言われて取り組んでいる事になるのではないでしょうか?

こういう子どもたちは、「やらされている内は成長はないな」と言われてしまうような傾向があるのではないでしょうか。

では、勉強や特定のスポーツに対し「やらされている子」は本当に花を咲かせることはできないのでしょうか?

【外発的動機付けから内発的動機付けへシフトする】

そもそも勉強を「やらされている」子供たちはなぜ勉強をやるのでしょうか?それは子どもが小学校や中学校という社会生活をし始めたときに、学校という社会の場が彼らに勉強をさせるのです。

子供たちは、学校の先生や親が勉強はするものであるという風にいい、さらには、自分の友達もやっている事であるので、本来勉強に内発的動機付けが働いていなかった子供たちも勉強に手をつけるようになるのです。

すなわち、子供たちは社会が与える「外発的動機付け」によって勉強をするようになるのです。
ではスポーツはどうでしょうか?

子供たちはどのように自分が好きなスポーツを選ぶのでしょうか?

一つはそもそもある特定のスポーツに「内発的動機付け」が働いている子供たちがいます。テレビや、保護者に連れて行ってもらったスポーツ観戦の際に、プロスポーツ選手の美技を見て、自分もできるようになりたい!と特定のスポーツに興味や好奇心が働くようになるケースです。このような内発的動機付けが働いている子供たちはやらされているような雰囲気はなく、自らスポーツに取り組んでいる姿勢が顕著になります。

半面、内発的動機付けではなく、友達がやっているから、友達がやっていて楽しそうだから、というのは内発的動機付けが働いているような子供たちとは違い、どちらかというと、友達と過ごせる時間という報酬が外発的動機付けとなって働いて取り組んでるケースとなります。

このような動機付けであれば、初めは自主練などに対しては興味が湧くはずがありません。

友達を一緒にスポーツをやっている時間が楽しいのであって、そのスポーツを家で1人で取り組むようなやる気はないのです。

しかしながら、お友達と一緒に過ごせるという外発的動機付けで始めたスポーツも、少しずつ上手になり、結果が出るようになるとどうでしょう。

そのスポーツ自体が好きになる可能性も出てくるのではないでしょうか?さらにこのように前向きな結果が手に入れられ、そのスポーツ自体が自分の好奇心や興味の対象となれば、次第に内発的動機付けが働くようになり、自主練などにも積極的に取り組む事ができるようになるのです。

また、勉強に話を戻すと、外から受けた刺激で勉強をし始めた子供たちが次第にそれぞれの科目に理解を深めることが出来ると、少しずつ科目ごとの楽しみを発見するようになります。

筆者の長男は現在中2ですが、保護者である筆者夫婦が積極的に「報酬」「褒める」事を与え、更には勉強を今しておかないと行ける高校の選択肢が無くなり、お友達が進学する学校にも入れなくなるという「諭し」という「将来的な懲罰」というような外発的動機付けを積極的に与え、勉強に取り組むようなやる気を作り出してあげています。

当然彼は勉強をやらされているわけだったのですが、前回の期末テストで初めて理科と国語で80点以上の点数をとることができ、とりわけ理科は本人も興味が湧いてきているようで、自主的に理科の勉強には取り組めるようになってきました。

そもそも外発的動機付けで取り組み始めたことも、分かるようになる、結果が出るようになることで、興味や好奇心が強くなり、内発的動機付けが働くようになるのです。

【やらされている内はお試し期間】

改めてタイトルの「やらされている内は成長はない」という言葉にチャレンジしますが、やる気のからくりを知ると、「やらされている内はお試しの期間」という風にも捉えることができると感じています。

お友達がやっているスポーツをやるというのは、そのスポーツとの出会いの場となるわけです。お友達との時間という報酬が手に入るから始めたことにはそもそも内発的動機付けは働いていないわけで、当然スポーツそのものはやらされていることになるわけです。

しかし、もしお友達がやっていなければそのスポーツと出会う事は無かったわけですから、スポーツとの出会いという意味では外発的動機付けで始めても全く問題無いわけです。

そして最終的にそのスポーツで結果が出るようになり、お友達との時間とスポーツ自体への興味が強くなれば、外発的動機付けと内発的動機付け二つのやる気が働き、自主的にそのスポーツに取り組めるようになるのです。

そしてもし、取り組んでいるスポーツに対し、好奇心や興味が湧いてこないのであれば、次のスポーツを探す旅にステップを進めていけばよいのです。

仲間と一緒に楽しむことができるスポーツは一種であるはずがありません。

スポーツをやる以上、内発的動機付けが働いた方がより楽しいに決まっているので、内発的動機付けがより働きやすいスポーツに出会うための旅をどんどん進めていけばいいのです。

勉強も同じように、初めは学校や社会が勉強への道を作ってくれるわけですが、取り組んでいくうちにそれぞれの科目の楽しさが分かるようになり、試験などでも点数が上がってくると、それらの科目に対し興味や好奇心が生まれることで、外発的動機付けと内発的動機付け、両方のやる気が働くようになるので、自主的に科目に取り組む事ができるようになるのです。

もちろん苦手な科目はあるかもしれません。しかし、まずは自分の内発的動機付けが働きやすい科目に出会えることで、理解力が増え、やがては苦手な科目も克服できるようになるかもしれません。

【まとめ】

「やらされている内は成長はない」というのは、やる気のメカニズムの視点から説明をすると、「まず人は外発的動機付けによって新しいことにチャレンジするが、そのチャレンジしていることに、次第に内発的動機付けが働くようになる可能性がある。しかしそうでない場合は、外発的動機付けのみで取り組む為、なかなか取り組み姿勢に勢いが出ず、手に入れることが出来る結果は内発的動機付けが働いている人よりは出にくくなる可能性がある」ということになるのではないでしょうか。

このような状況になってしまっているのであれば、「やらされている内は成長はない」と言い放つよりも、さらにやる気が生まれるように積極的に外発的動機付けを与え、より早く結果が得られるように応援してあげるという方法も選択肢の一つになるのではないでしょうか。

やらされている内もやる気は働いているのです。しかしそれは外から得られるやる気が主に働いているので、やらされているように見えるだけで、やらされている中で結果を手に入れる事でやらされている姿勢が徐々に自主的に取り組むような姿勢に変化していくのです。

やる気のメカニズムを通し、「やらされている内は成長しない」というフレーズにチャレンジしましたが、やる気のメカニズムを知ることで、「やらされている内は」もっと外からやる気を与えてあげることが出来るというヒントを得られることも良い学びとなったと感じます。

やらされていて、なかなか自主的に、能動的に取り組む事が出来ないようであれば、まずは報酬や褒めることを通じて、やる気を与えてあげてみては如何でしょうか。そうすればある時に手に入れた結果が内発的動機付けを誘発するかもしれません。

補足情報のサイト:
コンテンツサイト:金融教育と子どものやる気の関係 
コンテンツサイト:「外発的動機付け」の種類 
外部サイト:文部科学省 
外部サイト:エンハンシング効果とは?意味や定義、活用方法や注意点について 

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